★ 任意保険とは(自賠責保険との違い)

 

 1 任意保険とは

 

 新車の購入時および車検更新時に加入が義務付けられている自賠責保険(加入が義務づけられているという意味で「強制保険」という表現もされます)に対し,自動車の所有者や使用者が「任意」で加入される自動車損害賠償責任保険のことを「任意保険」と言います。

 

 双方の違いを簡単に説明すると,自賠責保険は被害者の保護を主に,制度設計されているのに対し,任意保険は,保険契約者である加害者の保護を中心に制度設計されているということができます(もちろん,被害者に対し,確実に被害弁償ができるという点では,被害者の保護にも資する部分もあります)。

 

 つまり,任意保険は,拡大する可能性のある被害者への損害賠償義務のリスクをヘッジする等して,自動車の所有者や使用者が自身の財産を守るため(その意味が最もわかりやすいのが,自身の車両の損害に対応する車両保険です)に加入する保険です。

 

 たとえば,自賠責保険は,死亡事故で3000万円,重度の後遺障害が残る事故でも4000万円が支払限度となっていますが,実際に加害者が負うことになる損害賠償義務は,何億円となるケースも稀ではありません。

 また,自賠責保険は,お怪我などの人身部分には対応可能ですが,物損部分には一切対応していません。

 

 そんなとき,自賠責保険だけしか加入していなければ,加害者は,自賠責保険の範囲を超える部分につき,自身の財産や収入から被害者に損害賠償をする必要があります。

 

 となった場合,加害者はすべての財産を失ったり,それだけでは賠償できず,生涯にわたり,損害賠償の支払いに追われるということになりかねません(自己破産をしたとしても,自身に重大な過失がある場合の被害者の人体に対する損害賠償責任については,免責されないことになっていますので,支払義務がそのまま残ります。破産法253条1項3号)。

 

 そのようなリスクを回避するために加入するのが,任意保険です。

 

 ですので,任意保険は,自賠責保険を超える部分の損害賠償責任に対応する部分の支払いを担保するものであり,自賠責保険が補償する範囲の部分については任意保険の支払いはありません(たとえば,車検切れの車で自賠責保険がないが,任意保険には加入している場合,自賠責保険の補償範囲部分は任意保険会社は支払ってくれず,その部分は自己負担となります)。

 

 以上が任意保険と自賠責保険の簡単な説明ですが,言えることは,自動車を運転する場合は,自賠責保険も任意保険も必ず入っておかないとダメということです。

 

 

 2 任意保険会社の役割

 

 任意保険が,自賠責保険が補償する範囲を超える部分を担保する保険であるとすると,軽微なお怪我だけの事故の場合など,自賠責保険の補償範囲内で収まる事故であることが明らかな場合では,任意保険会社は「関係ないので関与しない。」という対応をとっても良いかもしれません。

 しかし,実際には,多くの場合,任意保険会社は被害者に対する対応(示談代行や賠償金の支払い等)をしてくれます。

 

 これは,自賠責保険に対し,最終的には自身の会社が支払った分を再請求することを前提にして,任意保険契約者(つまり,保険会社のお客様)に対するサービスとして行っているものです。

 

 また,加害者側の任意保険会社はあくまで,加害者が負うべき,損害賠償義務の支払いを代行するだけですので,被害者が任意保険会社に対し,直接請求する権利は,法律的には存在しません。

 

 

 3 自賠責保険に対する「被害者請求」とは 

 

 任意保険会社の役割の部分で説明しましたが,任意保険会社はあくまで,自身のお客様に対するサービスとして,お客様が「加害者の立場で」負う損害賠償義務の支払いの代行を行うだけのことです。

 

 とすると,自賠責保険の範囲内で終了することが明らかな事故であったり,被害者側の過失が大きかったりするような事故では,任意保険会社は,被害者に対する賠償交渉には一切関与しなかったり,治療費の支払いの負担も拒否することもありえます。

 

 そのような場合,被害者のほうは,「被害者請求」と言って,加害者の契約する任意保険会社に対し請求するのではなく,加害者の加入している自賠責保険の会社に直接請求することになります。

 

 

 4 自身の契約する任意保険会社の役割

 

 加害者側の任意保険会社が対応してくれない場合,自身は自賠責保険に被害者請求せざるを得ないと,前の3で記載しました。

 

   ただ,自賠責保険に対する被害者請求の場合は,

   ・ 自身の健康保険を使わざるを得ない。

    (健康保険を使用しないと治療費の健康保険負担分がなくなるので,全額負担となる)

   ・ 自身で,治療費を医療機関に一旦支払わないといけない。

    (自賠責保険の被害者請求は,原則,一旦自身で支払った後にしか支払ってくれない)

  など,かなりの不便を感じると思います。

 

 そんなときは,「自身が契約する任意保険会社があれば,その任意保険会社が何かしてくれないのか」という思いになるかと思いますが,以前の制度では,「任意保険会社は,あくまでも,加害事故について,損害賠償責任を担保するものであり,被害事故の場合は,加害者への損害賠償請求も含めて,被害事故の被害回復には,原則として関わらない。」というものでした。

 

   しかし,近時,任意保険の契約内容の変更により,下記の便利な制度ができています。  

  (詳細は,「任意保険の便利な特約」のページを参照ください)。

 

 ですので,交通事故にあった場合は,自身が契約する任意保険会社にも連絡をして,下記の特約の利用が可能かどうか,確認してください。

 

                     記

 (1)弁護士費用特約

 

  被害事故につき,弁護士に依頼して,加害者への損害賠償請求を行うのに,その弁護士 

 費用を,自身が契約する任意保険会社が負担してくれる制度。

  加害者側との交渉は弁護士がすべてしてくれるが,弁護士費用は任意保険会社が負担し

 てくれるので,事実上,無料で,弁護士に依頼することができる。

 

    人身事故だけでなく,物損事故でも利用は可能。

 

 (2)人身傷害補償特約

 

  人身事故で自身に発生した損害を,自身が契約する任意保険会社が,契約する保険内容

 に従って(「過失割合に関係なく」,「契約で決められた基準となる金額」で)支払って

 くれる制度。

 

  自身の過失が大きい場合でも,決められた額の補償が受けられる点,加害者側が支払い

 を拒否する場合でも,早急に支払いを受けることができる点,大きなメリットがある。    

 

  治療費だけでなく,休業損害,慰謝料,さらに,後遺障害のある場合の損害(慰謝料,

 逸失利益など)も支払ってくれるが,契約で決められている各損害項目の支払基準額は,

 裁判等で認定される金額より低い基準になっているケースが多い。

 

 (3)無保険車傷害補償特約

 

  人身事故のうち,後遺障害があったり,最悪の場合,死亡にいたるような重大な損害が

 あった事故において,加害者側に使用できる任意保険がなく,その被害回復が困難である

 場合に,自身が契約する任意保険会社が,任意保険のない加害者に代わって,損害賠償金

 を支払ってくれる制度。

                                        以上

詳しくは、「任意保険の便利な特約」をご参照ください

 

 初回相談無料

お気軽にご相談ください

アクセス

 京阪「丹波橋駅」北口、すぐ

■お電話でのお問い合わせ

 075-611-3600

■HPからのお問い合わせ

 お問合せはフォーム

■メールでのお問い合わせ

 tanbabashi-law@if-n.ne.jp

 

丹波橋法律事務所

〒612-8085

京都府京都市伏見区京町南8丁目101-1小山ビル3階東


TEL:075-611-3600

FAX:075-611-3605 


email:

tanbabashi-law@if-n.ne.jp

 

 

 

法律の専門家として

マイベストプロ京都

に掲載されています。